だんだんと梅雨の足音が聞こえてくるような季節となりました。本日は、葛城の水辺で撮影された野生動物の動画を紹介します。
葛城緑地の一角には、かつては谷津田として利用されていた小さな谷津があります。今では谷津田として使われなくなって久しく、もともと少し低い、周囲から水が集まりやすい地形であるため、同時に少しずつ周囲から土砂や落ち葉などが流れ込むなどして、年々水が溜まりづらくなりつつあります。それに伴い、生息する生き物も変化していきます。このように、だんだんと乾燥化が進んで生態系が変わっていくことを湿生遷移と言います。
かつては、手入れをし続けてこのような場所を谷津田として、湿地帯として維持していました。それがむしろ、様々な生き物にとっての生息場所を提供し、豊かな生物多様性を維持していました。しかし、周辺で開発が進んで急速に湿地帯が失われつつあるつくばの研究学園都市では、そのような湿地帯は貴重となりつつあります。
そこで、この葛城の水辺がどのような状態であれば、どのような生き物が生息するのかを調査しつつ、貴重な水辺の自然が維持されるような管理を目指しています。その一環として、市民の皆さんのご協力をいただきつつ、水辺での水面の面積を増やす実験をしていいます。そのような実験によって増えた水面で、どのような生き物がその環境を利用しているのか、一年間のカメラトラップ調査の一環で得られた動物の動画の一部を紹介します。
2018年の5月に、みなさまのご協力のもと、水辺の最も深いところをさらに掘り込んで、水辺には開放水面が出来ました。少し掘っただけで、湧き水のような形でこんこんと水が湧き出て、写真のように水で満たされました。
2018年5月14日月曜日 5月の里山散歩ご報告 より |
モズの親子は、夏の間ずっと水辺を占拠していて、数百枚の画像が撮れてしまい担当者を困らせました。なにか良いエサがとれるような場所になっていたのかもしれません。ノウサギはしきりに泥をなめている様子が見られました。泥に含まれる何かを摂取しに来たのかもしれません。
秋から冬には、ほとんど水が溜まることはなくなってしまいました。それでも、やはり周囲と比べて少し湿った、植物のない環境には何かがあるのか、ノウサギに続いてタヌキやキジなどが観察されました。
状況が大きく変わったのは、3月に入ってからでした。この時期、比較的長い間まとまった雨が続いた結果、水辺全体に大きな開放水面が出来ました。少したって水が減っても、イベントで掘った場所には水が溜まり続けました。すると、これまで見られなかったイタチやハクビシン、そして水鳥であるアオサギなどが、たびたび見られるようになりました。
このように、開放水面があり続けると様々な生き物が来るとわかり、前回の掘り込みから約一年たった先日、再びイベントにてみなさまのご協力をいただき、開放水面を広げてみました。
2019年4月24日 葛城里山クラブ春の交流会 より |
すると、今度はカルガモがいつもいるようになりました(枚数が多すぎて担当者を困らせています)。水にもぐって餌をとっている様子が観察されています。水鳥に関しては、いままで水辺に居ついてくれることがなかったのですが、これからは普通の光景になるかもしれません。
一年間で、水辺の環境は変化し、同時にそこに出現する生き物も大きく変化してきました。今後も、このような変化を記録しつつ、適切な管理に結び付くようなデータを収集し続けていこうと思います。